障がいを持った方々が
スポーツに
取り組める
"きっかけ"
づくりを
しています
大島 伸矢
OSHIMA SHINYA
一般社団法人スポーツ能力発見協会
 理事長

passion

世界で戦える可能性を秘めた
アスリートを支援。
障がいを持った方々がスポーツに取り組める
“きっかけ”づくりをしています

障がいのある子どもたちがスポーツに取り組むきっかけを作りたい

─ 一般社団法人スポーツ能力発見協会(以下DOSA)の設立の経緯と、現在取り組んでいる「パラエール」について教えてください。

大島さん(以下、大島):2007年に設立した会社で、子どもの能力……例えば運動能力や音感、数字や自然とのふれ合いなど、その子に何が向いているか、どんな志向性があるかをチェックするシステムづくりをしていました。
僕自身が学生時代までサッカーをやっていたこともあり関心があったんです。そこで、スポーツに特化した能力チェックや、向いているスポーツのアドバイスをできないかと考えるようになりました。実は子どもの運動能力のチェック、いわゆる体力測定は昭和39年から測定方法が変わっていません。測定もそれぞれの学校で先生が行うので、誤差が生じますよね。もっと画一的に、同じ環境で正確にデータをとれないかと考え始めました。
実際に取り組みとして始めたのは2012年ごろで、2013年11月に試験的に測定会を行いました。そこへは400~500人の申し込みがあり、時間内に全員の測定を終えることができないほどの反響がありました。「やはりニーズがあるんだ」と確信し、2014年2月にDOSA(ドーサ)を設立し、測定機材や測定方法の改良に乗り出しました。

─ そこからさらに、障がいのある子どもたちに目を向け始めたのには、きっかけがあったのでしょうか?

大島:DOSAが現在メインで行っている測定会は、いわゆる健常の子どもが多く参加しています。1回の開催で1,000人ほどの申し込みがあり、保護者の方の関心度の高さも感じますね。ただ、障がい者の方からの応募はほとんどありませんでした。
その理由は、「健常者がいるので・・・」というのが最も大きなもの。「うちの子どもでは運動なんてできっこない」という声もありますし、「障がい者という目で見られたくない」という気持ちがあって、興味はあっても参加できない、したくないと言われてしまったんです。
それではなぜ、そうしたネガティブな思いを抱えなければいけないのかと考えたときに、日本と海外の「障がい」に対する考え方の違いに気がつきました。海外では障がいがあることを周囲に伝えることで、障がいに合わせた教育を受けます。そして障がいを持っていても堂々とカミングアウトしますし、堂々と街を歩きます。障がいがあるのなら、それに合わせた生き方をすればよい、失ったものがある一方で得たものもある、と考えるからですが、日本ではいわゆる“普通”とは違うということを認めたくない、隠したいという気持ちが働いてしまうことが多いようです。だから結果として、「健常者のいるところに行きたくない」と思うようになり、測定会にも参加しないというわけです。

世界で戦える可能性を秘めた選手を、経済面を軸にサポート

─ それで「パラエール」を始めたんですね。

大島:先に述べたような「障がいがあることで人目が気になる、生きにくい社会」を変えたいと僕は考えて、先ずは「障がい者の住んでる所へ出張測定」をはじめました。優秀な人材がたくさんいると感じましたが、競技の強化指定選手や日本代表候補などの肩書がなければ企業の支援もなかなか受けられない厳しい現実があり、支援(指導者、練習場所、交通費)がないのでスポーツをすることをあきらめなければいけない事実をたくさん見てきました。そこで「パラエール」プロジェクトをスタートしました。具体的な取り組みは、障がい者アスリートの支援。この支援を軌道に乗せていくには、世界レベルの大会に出場することが大きなポイントになります。ここで多くの障がい者アスリートが活躍することで、障がい者スポーツへの理解や関心が高まれば、「自分にもできるスポーツがあるかも」「世界をめざせるかも」と思う障がい者の後押しにもなり、大きな盛り上がりを見せると考えています。

─ 具体的にはどのような支援を行っているのですか?

大島:障がい者スポーツの選手には、練習に使える施設がバリアフリーでない、経済的な理由で用具や機材の購入が難しい、大会や練習場所への移動費用がまかなえないなど、さまざまな“壁”があります。DOSAパラエールではその人が求める支援内容をヒアリングし、身体能力などの条件を満たすことで金銭面でのサポートを行います。
例えばパラエールで支援しているパラローイング(ボート競技)の黒川真菜さんは、練習場所への交通費などをまかなうためにアルバイトをしていましたが、そのせいで十分な練習時間がとれないという壁がありました。そこで我々は支援としてアルバイト代とほぼ同額のお金を補填し、練習に集中できる環境をつくりました。
その他、地方の選手には都市部への遠征費用、子どもがいて練習時間が十分にとれないという選手にはシッター代の負担など、それぞれが必要としているところに細かな援助を行っています。

─ 測定の結果、世界をめざすのは難しいという判断になる方も多いかと思いますが、そういった方へのフォローアップなどは?

大島:例えば現在やっている競技での世界レベルの大会出場が難しくても、他の競技に転向するという選択肢もあります。それから大会では、障がいの種別や度合いに応じて出場できる競技・種目が限られていることも多く、自分がどの種目なら出場できるのかが分からないという人もたくさんいます。そうした人たちに、運動能力の測定と一緒に「この種目なら世界をめざせる」などのアドバイスを行い、スポーツに継続して取り組んでいくためのサポートもしています。

障がいがあっても、スポーツを通して希望や目標に出会えた子どもがいる

─ パラエールの取り組みを通じて、やりがいを感じられるのはどんなときですか?

大島:支援している選手が結果を出したときはもちろん嬉しく思いますが、保護者の方の声を聞いたときもやりがいのようなものを感じます。
以前福岡県のラジオ番組にDOSAとして出演した際に、聴覚障害のあるお子さんを持つお母さんから連絡をいただいたことがあるんです。「うちの子はいま陸上競技をやっていますが、出られる大会はあるんでしょうか?」という質問でした。実はパラリンピックの陸上競技には「聴覚障害」の方が出場できる種目がありません。ですから、「他の国際大会ならめざせるかもしれない」とお伝えしたり、測定会などの場で直接話をして励ましたりといったことしかできませんでした。それでもお母さんからは「みなさんに出会ってから、子どもがすごくやる気を出して、目標に向かって頑張るようになった」とお礼の言葉をいただけたことがあって、そういう声を聞くと、結果は出せていないけど「やっててよかったな」と感じることがあります。

─ DOSAパラエールでは、障がい者アスリートをともにサポートしてくれる支援企業を募っていますが、こんな企業と一緒に頑張りたい、という想いはありますか?

大島:何よりも“気持ち”でしょうか。僕たちの想いに共感してくださる企業です。スポーツ関連のメーカーであるとか、規模が大きいとか、そういったところよりも、障がい者が本当に世の中を支える存在であるということに気づいている方と一緒に頑張れたら嬉しいですね。
僕自身、障がい者の方と話したりふれ合ったりという機会はこれまでほとんどありませんでしたが、誰に会っても「すごいな!」と思わされることばかりです。そうした人たちの存在を知って、頑張ってほしい、応援したい、と思ってくださる企業の方と一緒に手をとりあっていけたらと思います。

世界レベルの大会をきっかけに、障がいを隠さなくてもいい社会へ

─ DOSAパラエールの取り組みを通じて、どんなことを実現していきたいとお考えですか?

大島:障がいを持っている人には「Gifted(ギフテッド)」と呼ばれるような、健常者にはない優れた力を与えられている人もたくさんいます。例えば視覚に障がいのある人でも聴覚が僕たちよりもはるかに優れていたり、片足のない人は残った足の筋力が大きく発達したりといったように、健常者には得られなかった力を秘めているんですよ。そんな力があるのに生かせない社会って、もったいないですよね。
ですから僕がめざしたいのは、障がいのある人がそれを隠さなくてもいい社会を実現すること。そのための道筋はまだまだ遠く険しいものですが、世界レベルの大会はその足がかりになるはずです。
最初にお話したように、日本ではまだ障がい者への理解や、バリアフリーなどの環境整備、スポーツ施設、指導者の数の強化が進んでいませんし、障がいをもった人が堂々と社会に出てこられる空気が醸成されているとはいえません。パラリンピックへの注目度がオリンピックと比べて低いのも、その表れだと思っています。

─ パラエールで支援した選手の活躍で、障がい者アスリートがもっと増えることも考えられますね。

大島:そうですね。そうすると、「自分たちもスポーツを楽しめる環境がほしい!」とみんなが声を上げるようになります。障がい者のスポーツ指導をするコーチも必要になります。そうして、社会が少しずつ変わっていって、誰もがスポーツに取り組める環境が整って、障がい者が人目を気にせず過ごせる社会になりスポーツ・ビジネスなど多くの場で活躍してくれたとき、「自分たちのやってきたことに意味があった」と感じられるのかもしれません。

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